函館駅前通りから少し外れた路地裏に佇む「漁師の台所 あおぞら」。情報に目ざとい観光客の間で「函館で絶対に外せない朝ごはん」として密かな話題になっている名店をこっそりとご紹介します。
店主の佐々木正雄さんは元漁師。「とれたての魚を最高の状態で食べてもらいたい」という思いから10年前にこの店を開いたそうです。現役時代の仲間たちとのつながりを活かし、毎朝6時には魚市場に足を運んで、その日一番の魚を仕入れているとか。
看板メニューの「雪まぶし丼」は、季節ごとに主役が変わる函館の味。冬は真ダラ、春はサクラマス、夏はブリ、秋は真サバなど、その時季いちばんの旬の魚を贅沢に使用します。佐々木さんは「季節によって魚の旨味も変わるから、山わさびの泡の量も微妙に調整してるんですよ」と、職人ならではの繊細な技を明かしてくれました。
この斬新な一品が生まれたきっかけを伺うと、「ある冬の朝、市場で仕入れた真ダラをさばいていたとき、窓の外で舞う雪を見てひらめいたんです」と、目を細めながら教えてくれました。
炭火であぶった魚の切り身を函館近郊産のお米「ふっくりんこ」のご飯に載せ、独自の手法で細かく泡立てた山わさびの泡で魚を覆うこの丼。真っ白な雪のような見た目の美しさに目を奪われますが、実際に口に運ぶと、これが衝撃的なおいしさなんです!
「脂がのった大きなホッケが入った」とのことで、この日はホッケの雪まぶし丼。ふわふわの山わさび泡が口の中でふんわりと溶けていき、その後からホッケ特有の味わい深い旨みが広がります。そこに熱々のあら汁をかければ、わさびの香りと魚の旨味が一気に広がります。寒い函館の朝に、これ以上の朝ごはんがあるでしょうか。
常連さんに人気の「漁師の気まぐれ海鮮丼」も見逃せません。その日一番の魚を佐々木さんが厳選して盛り付ける”おまかせ丼”です。私が訪れた日は、神経締めした函館産のブリに津軽海峡産の本マグロ、道南産のブランドサーモン「銀波(ぎんぱ)サーモン」と、まさにみなみ北海道の海の幸の饗宴!
「観光客向けの店にはしたくなかったんです」と佐々木さん。だからこそ、地元の方々に愛され続ける名店なのでしょう。
旅行・観光で函館を訪れた方は、函館の有名な市場で食事をすることが多いかもしれません。もちろんそれもおススメですが、2度目、3度目に函館を訪れた場合は、少し足を延ばして「あおぞら」に立ち寄れば、きっと函館の新しい魅力に出会えるはずです。

四季折々の雪まぶし丼を食べ比べるのも、楽しみ方の一つかもしれませんね!
定休日:日曜日
料金:雪まぶし丼1,600円、漁師の気まぐれ海鮮丼 2,500円
住所:函館市大門町2-15
席数:12席