雪を料理に変える魔法の喫茶店「粉雪堂」

函館山の中腹に佇む一軒の古民家。そこには、北海道でただ一軒、雪を料理に変える不思議な喫茶店「粉雪堂」があります。店主の雪村つむぎさん（68歳）が、代々受け継がれてきた秘伝の「雪変化の術」で、真っ白な雪を様々な料理に変身させる珍しいお店なのです。

看板メニューは「雪のカルボナーラ」。粉雪を特殊な方法で加工し、まるでパスタのような食感に仕上げた逸品です。口に入れた瞬間、とろけるような食感とともに、まるでクリームソースのような濃厚な味わいが広がります。「実は祖母から受け継いだ技で、雪の結晶構造を再構築しているんです」と雪村さん。

特に感動したのが「ふわふわ雪のティラミス」です。まるで雲を切り分けているかのような触感で、スプーンを入れると”ふわん”と音を立てて溶けていきます。口に運ぶと、エスプレッソの香りと、雪独特の清らかな甘みが絶妙なハーモニーを奏でます。「雪の結晶の中にコーヒーの風味を閉じ込める技は、企業秘密です」と雪村さん。

そして驚きなのが「粉雪のかき氷」。一般的なかき氷とは全く異なり、まるで綿菓子のような食感なのに、不思議とひんやり感が持続するのです。私が訪れた日は、季節限定の「オーロラ色の粉雪かき氷」を注文。北国の夜空のように七色に輝く氷に、思わずため息が漏れました。

「実は雪の結晶それぞれに個性があって、デザートに向く雪、パスタに向く雪を見分けるのが私の仕事なんです」と雪村さんは優しく微笑みます。函館の街を見下ろすテラス席で、幻想的な雪のスイーツを楽しむ至福のひととき。まさに函館でしか味わえない魔法のような体験です。

（山本 奏美）